メイドさんは世界一いいいい!

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 いやいやとメイドさんが呆れるが、オレも同じく呆れてしまう。メイドさんがいるから女性不信とは言い難いだろうから、童貞を拗らせたなにかだろうか。まあ……、オレも人のことは言えないけどな。たぶんあれだ、美形すぎて女の子が近づいてこない現象だな。  羞恥を払拭するためかなんなのか、軽くこほんとひとつ咳を払った男――シュナイデントは「手短に済ませますので、どうか逃げないでいただきたい。――私があなたを射止めた理由が解りますから」と丁重にオレの右手を取った。そうして両手で優しく握りしめるその間も、頬を染めながら柔らかな笑みを浮かべている。……やっぱりこの人は免疫がないのかね。異性と触れあうということに対して。あ、婚約者がどうのこうのと言っているから女の子を対象にしているでいいんだよな? 大丈夫だよな?  オレも人のことをとやかく言える立場ではないが、一応彼女がいたときもあったので多少の免疫はあるとは言っておこう。悲しいことにフラれてしまったけれども。キスまでは進むことはなかったが、お喋りも手を繋ぐこともできただけよしとしよう。思い出してしまえばちょっと感傷に浸りたくもなるが、そういうわけにもいかないか。いい加減に話を戻そう。  しかし、逃げるなと言われても、これではどうにも逃げられるような雰囲気ではないんですがね。もう一度そんな風に呆れたとたん、おびただしい量の情報が流れ込んでくる。これはこの世界で生きる者の――魔王たるシュナイデント・オベルリインの記憶だ。ともに生きる者を、花嫁を必要とした彼は、別の次元へと手を伸ばした。よく解らないが、選ぶのなら選択肢が多い方がいいということだろうか。  そして、そこでちょうどよく死んだオレ――駒々(こまごま)春久(はるひさ)に興味が湧いたわけだな。ぶっちゃけ趣味が悪すぎるとは思うが、気持ちは解らないでもないから黙っておこう。オレでも興味が湧く可能性があるわけだし。  そしてなんだ、オレはやっぱり死んだわけか。そうすんなりと納得したのには理由がある。――この世界に来る前に、五つ歳の離れた姉ちゃんの子供を庇ったからだ。三歳というかわいい盛りの彼女とオレは、姪っ子と叔父さんという間柄である。おそらく魔王様は、そういう事情から興味が湧いたんだろう。
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