メイドさんは世界一いいいい!

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 久し振りに実家に顔を出した姉夫婦と買い物に出かけたはいい。姪っ子は姉ちゃんが作ったテディベア――オレから見ると全長三十センチぐらいで片手でも持てるサイズだが、姪っ子からしてみれば少し大きいだろうか――に興奮していた。コーヒーとミルクを混ぜたような色合いのそれをどうやらオレにも作ってくれたらしい。「いっしょっ」「みて!」とそれはそれははしゃぎながら渡してくれた。ちなみにオレは「はる叔父さん」ではなく、「はるにい」と呼ばれていたりする。 「ありがとうなー」 「んっ!」  受け取ったテディベアを自分の顔の横に並べれば、姪っ子はなんとも得意気な顔をした。それからずっとテディベアを離さなかったわけだ。もちろん店内でも。……オレもだけれどね。オレの方は車に置いておこうとしたのだが、「やだ! いっしょ!」と言われてしまえば従うしかない。  そうしてお目当ての食材を買い込んで車に戻ろうとしたときに、それは起こった。平たく言えば、駐車場に姪っ子が飛び出したのだ。きっと早く帰りたかったのだろう。そしてオレの方は、驚く間もなく躯が動いた。「危ない!」という叫び声とともに。  二体のテディベアごと姪っ子を腕のなかへと納めた瞬間、あろうことか車と接触してしまう。大きさだとか車種だとかは知らない。とにかく姪っ子に怪我をさせてはいけないと必死だったから。  車のスピードはそんなになかったにせよ、倒れた打ち所が悪かったのかなんなのか、痛いと思った瞬間に意識を飛ばしていた――と思われる。いやもう本当に、これ痛いわー、と思ったあとからの記憶がないのだ。呻いた気もするが、もう解らない。  そして魔王様は、こと切れたであろうオレをまさかの「ネコミミの女の子」にしたわけか。婚約者にするために。どおりで話す声が女の子っぽいなあと思ったよ! 違和感がすごかったんだからな! いやあ、いい趣味をしているよなー。もちろん誉めているわけではなくて、嫌味ですがね。嫌味以外の何物でもないですよ。 「言っておきますが、なにも男を婚約者にする必要はなかったと思いますよ?」 「私はあなたがいいと思ったんです。心優しいあなたに傍にいてほしい」 「そんなに優しくはないんですが……」  助けたのは姪っ子だからであって、誰も彼もというわけではない。買いかぶりすぎですよと吐き出せば、なぜか掛け布団がもぞもぞ動き始めた。 「んにゃ!?」
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