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水面から差し込む光に照らされた水底を目指す。
大きめの石を見つけ両手でつかみ体を引き寄せた。片手で手近な石を拾い上げてみるがやはり宝石ではない、お菓子の家と宝石では創造の難易度は格段に違う。
目を閉じて、仰向けになって体の力を抜くと、ゆっくりと体が水面に浮き始めた。
夢の中なので息苦しさなどは全く感じない。手を組んで頭の上に伸ばし体を反り返させる。
目を開けて大の字になり手足の指を広げ、腕と足の筋を思いっきり伸ばした。
空の光でキラキラと光る水面が少しずつ近づいてくる。
顔が水面に出たので思いっきり空気を吸い込んだ。
身体中の筋肉を限界まで脱力させ、ただ水面に浮かびながら今回の夢について考えてみる。
状況が変わったのか、この世界では初めて武器を携行している。服もなんだかんだ言って防弾、防刃のボディースーツだった。
「戦え、と言うことかしら……」
空に漂う夏の雲が視界に入り、裸身が足先から空の光りの陰になっていく。レイは広げた足を先にして、ゆっくりと川下に流されていった。
今までは、ただ何となく夢の中で生きてきたレイだったが、今回は何か明確な目的に出会うのかもしれない。改めて思うとロレンツは白銀騎士として戦っている。
「たった一人で日本刀を振り回し、いったい何と戦えば……。ロレンツを手伝えと?」
爪先が砂に当たる、どうやら浅瀬にたどり着いようだ。少し足を上げると反動で顔が水に浸かる。レイは両腕を川底に着いて上半身を起こした。
「それにしても私ったら、何て格好……」
片腕をついて、両膝を斜めに曲げて立ち上がり、顔に付いた水滴を両手で拭い髪をかき上げる。
川沿いの景色を眺めた後、振り返ると脱ぎ捨ててある服と装備の傍らに男が一人立ってこちら見下ろしていた。
「――きっ、きっ、キャーーっ」
一瞬固まったレイは悲鳴を上げ、胸を押さえ下を向いてしゃがみ込む。
「うっ、後ろを向いて」
顔を上げ叫ぶと男は素直に従った。それにしても、こんな事態は想定できたのに、つい忘れてしまっていたレイは自分を恥じた。
片手で胸を押さえながら、恐る恐る脱ぎ棄てた衣服に近づいて、ボディースーツを手に取り足を通す。
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