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タケシはレイを振り返る。
「これは魔だよ。初めて見た?」
「ええ、初めてよ。街にはこんな物いなかったし……、話には聞いていたけど……」
「これくらいのサイズなら大した問題はないよ、雑魚みたいな魔。魔雑魚だな」
レイは魔雑魚という言葉にも知っている。そして、その魔雑魚が集まり何になるかも知っていた……。
そしてそれが、ロレンツたちが戦っている相手だとも。
「今度は俺が前を歩くよ」
「うん、お願い」
◆
日が暮れる直前に、二人はなんとか街にたどり着くことが出来た。
「レイ、俺のマントを使えよ」
タケシは自分の黒いマントを外してレイに差し出す。
「その格好で街は……な」
「そっ、そうね、ありがとう。気が利くのねえ」
レイは忘れていたが、確かにこの服装のまま街を歩くのはかなり気恥ずかしかった。
マントを身につけながら街を見渡す。川沿いの高台にいくつかの石作りと木造建物が立ち並び宿場町の風情だった。
二人は眼についた酒場に入り、カウンターに座ってビールを注文する。
この世界に貨幣はなかった。全ての物は人により創造され有料、無料の概念とは別の価値観で提供されている。
乾杯をしてレイは一気に三分の一程を飲み干す。
「うーーん、こっちの世界のビールは美味しいわあ。日本の生とはちょっと違うのよね!」
「レイは未成年じゃないの?」
「二十歳よ、問題なし」
そう言ってレイはまた、グラスに口をつける。
「ふう……、ねえタケシ。もっと大きな魔って見たことはあるの?」
口元に運ばれかけていたジョッキが一瞬止まったが、タケシは半分ほどのビールを一気に飲み、ジョッキをカウンターの上に置いた。
「あんな物に興味があるのか。気にするようなことじゃないよ」
「はぐらかさないで! 話ぐらいは私だって聞いたことあるんだから」
レイの大きな瞳にじっと見つめられ、タケシはたじろぎ、伏し目がちに答える。
「俺が見たので一番デカイヤツは、人間サイズ以上の魔人と呼ばれているヤツだ。あれは最悪だ。最初は犯罪者の類いで強盗や薬に手を出している、そんな奴らがこっちにやって来た時の姿ぐらいに思っていたんだ。あれは――」
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