0人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
帰宅
電車を降りて駅を出たところで、僕は家に電話をかける。
八度目のコールで繋がった。
「……もしもし」
受話口から聞こえる君の声。
息が弾んでいる。
「今、駅に着いたよ。これから帰る」
「ええ……わかっ……たわ。あ……あなた」
「なんだい?」
「お願いを……聞いて……欲しいの」
「何?」
「えと……パン。そう、明日の……パンを……買い忘れ……たの」
「分かった。いつもの食パンでいいかい?」
「ええ……お願い」
「随分、息が上がってるね」
「今、お鍋……を見てた……から」
電話は切れる。
僕はスマートフォンを内ポケットにしまい、駅前のパン屋に向かった。
最初のコメントを投稿しよう!