7人が本棚に入れています
本棚に追加
村の外れにある小高い丘を登ったところに、彼女は建っている。
今日も今日とて僕はその丘を登り、この世で一番愛おしい彼女の前に跪いて、祈りを捧げる。
「おはよう、フィオナ。今日は、とても冷え込むね」
朝の透明な陽ざしを受けて艶めきを増した僕の恋人は、三年前と全く同じ姿のまま、聖女のように清らかな笑みを浮かべている。よく手入れのされていた長い髪も、風に靡いて揺れるスカートの襞の一つ一つまでもがぴたりと時を止めていた。
人間ではなくなり色を失った今でも、フィオナの魅力は全く色褪せることがない。それどころか、以前にもまして美しくなったようにさえ思うのは、彼女が物理的には触れられるほど近くにいるにも関わらず、精神的にはこの世で最も遠いと感じられるところにいってしまったからなのだろうか。
一年前のあの日、フィオナは僕の目の前で、今の姿となった。
彼女はあの日、石像へと変わり果てたのだ。
そのことは、今でも、あまりにも鮮明に僕の脳内に焼き付いている。
最初のコメントを投稿しよう!