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「ちぃちゃん」
げ。
あんみつにガムシロと蜂蜜ぶっかけてますー、って位甘い声で私を呼ぶ、婚約者殿の声が聞こえる。
来たよ、東河原山田っ!
細身で物腰柔らかな雰囲気と整った容姿ながらも、その性格は意外にねちっこくて……面倒なタイプなんだよな、この人。
私の顔がひきつるのを感じる。
「ちぃちゃん、なんて気色悪い呼び方しないで下さいっっ!」
……って言った所でこの人は私の話を基本聞いてないのよね。
「僕のお姫様は怒った顔も可愛いですね」
……姫って誰の事よ?
しかもこの人の、なんて有り得ないし。
私、すぐさまダッシュの態勢に入る。
今日の持ち物はこのヴァイオリンケースとバックパック。
幸いな事にスニーカーだから安心して走れる。
「どうして僕から逃げようとするの?」
悲しそうな顔で聞くけど、ごめんなさい、私にはあなたを受け入れられないんです。
ぺこり、と頭を下げると私は勢い良く駆け出す。
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