3人が本棚に入れています
本棚に追加
勉強時間を過ぎて、いつもならもう先生は帰る時間なのに、私のとりとめの無い話をじっと聞いていた。
先生は私の左手首に右手を延ばした。
傷痕に触れる先生の指が細長くてきれいだな、とぼんやり見ていた。
「痛かったね。
この腕だけじゃなくて、心も。
知華子ちゃんは、いい子ですよ。
お母さんや、その彼の気持ちを受け止めきれない事に罪悪感があるんでしょうね…」
ふっ、と先生が優しく微笑む。
普段は無表情で冷たい印象すら与える麗しい顔なだけに、その笑顔は私をどぎまぎさせる。
最初のコメントを投稿しよう!