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第22話 受け継がれた祈り
大陸北西部はこれまでとは違い、一面が雪の世界である。
そしてデントは女神信仰の篤い町であり、道の辻には小さな祠に、旅の安全を見守る『ミニ女神像』が立ち並ぶ。
それらの光景を、雪化粧ごしに眺めつつ行くのである。
「勇者様。女神像ですよ。ありがたやぁ」
「ほんとだ。草で作った傘をかぶってんのな」
「屋根無しだからじゃない? ここは雪国だもんね」
その石像は両手を謹み深く前に結び、柔らかな微笑みを浮かべている。
まさに慈愛と創造の神の名にふさわしい容貌だ。
ーーこれがあのエルイーザかよ。
普段の彼女を知る人間からすれば失笑ものであるが、これは設定通りである。
舞台裏では極端に品がなく、誰よりも横柄であることは周知の事実。
それでもゲーム内では別人なのだ。
エルイーザは、ソーヤとは違った意味での演技派役者なんである。
一同はその像を横目で眺めつつ、街道を進んでいった。
やがて、デントの町へと到着し、新たなイベントが開始した。
【イベント:女神の降臨 を開始します】
町の規模はカバヤに比べるとかなり小さい。
メインストリートは石畳だが、裏道などは未舗装で、雪が溶けずに残っている。
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