第1話  超大作RPG

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「王道シナリオとは言うが、古くさい。サクサク進行じゃなくて、薄っぺらい。新作で買わなきゃ良かった。ガッカリ系のクソゲー。評価は星0.5……と」 悪態をつかれてしまったこのゲームソフトだが、本作は販売開始してひと月も経っていない新作である。 販売元は社運でも掛けたかのような腰の入れようで、発売日までに広告は頻繁に、あらゆるメディアで大きく打たれ続けた。 結果、プロモーションそのものは大成功。 購買意欲を煽る大風呂敷が連日に亘って広げられ、ネットも雑誌も連日大盛況だった。 幸運な事に熱気はソフト発売日まで続き、初週セールスはかなり好調で、地域によっては品薄状態となる程に売れた。 関係各所が奔走し、命を削るようにして作り上げた作品は成功を収めたのである。 初週セールスだけに限り。 「あーぁ。久々に新品で買ったけど、失敗した。先にレビュー見とけば良かったよ」 ーーポチッ。 エンディング画面の途中で電源が落とされた。 もはや見る価値なしという、非情な評価が下された為である。 微かな電子音の後にゲーム機は稼働を停止する。 そしてテレビの電気も落とし、彼は徐(おもむろ)に眠り始めた。 全てが眠りについたかというと、それは違う。 人目を憚る心配が無くなったため、もう一つの世界、ゲーム内にて幕が開くのである。 ーーーーーーーー ーーーー 「お疲れっしたーーァ!」     
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