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昼過ぎに孝彦は起きた。トーストの匂いはしない。昨日の出来事について孝彦は考えていた。彼女がいなくなって半年以上経っていた。どうして今になって彼女の声が蘇ったのか。どうしてまた彼女と別れなくてはならないのか、孝彦には判らなかった。頭をぼりぼりと掻いて、テレビをつける。すると何かの事件が起きているのか、生中継、と表示された映像が流れ始めた。
「半蔵門線で起きた脱線事故の影響で、ダイヤに大きな乱れが出ています」
神保町駅の地上出口が映され、何台も停められた救急車が臨戦態勢とばかりに赤色灯を光らせている。ビニールシートで隠され、怪我をした人々が搬出されていく。周囲を野次馬と立ち往生する乗客が埋め尽くしている。
孝彦は枕元の携帯を見た。電源を入れた途端に、それは大きく鳴り響いた。
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