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次の仕事をどうしようか、と考えてベッドに寝そべる。そう思いながらも、あまり深刻さはなかった。軽傷の人はいたが、死人は出なかった。それだけで思い煩うことは何もない気がしていた。ただ自分を庇ってくれた白髪の社員だけは気の毒に思った。彼は孝彦を信じてくれていた。孝彦が辞めると判った時、とても残念そうにお別れを言ってくれた。それはとても有り難く、やはり気の毒に思えた。彼が信じていた孝彦は、だんまりを決め込んで自分のミスを白状しない卑怯な人間だったからだ。
昔から、孝彦はよく間違える男だった。間違いは間違いのままに、正さずに放置し、周囲の人々が勝手に納得する。そういう状況によく遭遇した。海が見たいな、と孝彦は呟いた。天井には染みが出来ていて、そろそろ雨漏りするかもしれないと思った。
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