霊の威を借る狐

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霊の威を借る狐

どうしてこんなことになったのやら。 結局、俺は貴重な休日を潰してファミレスに出向くことになってしまった。 「コイツが俺の幼馴染の齋藤。んで、彼が伊藤くんで彼女が樋口ちゃん。」 伊藤と呼ばれた彼は、小麦色の肌をしてスポーツ刈りの快活な男子だった。樋口ちゃんは物静かで清楚な感じの女の子で、察するに、伊藤が秋元にふっかけたせいでこの会が開かれたのだろう。 「いきなりだけどさ、齋藤くん、秋元に霊感があるってマジ?」 伊藤が早速口火を切ってきた。秋元がしれっとアイコンタクトを送っている。分かったから。 「あー……そうだよ。ちっちゃい頃からずっと。」 「マジかよ!ヤベぇな!」 横目で秋元を見ると、ホッと息を撫で下ろしたようだった。本当の事を告発してやりたい気持ちに駆られる。 「ほらー、だから言ったろ?嘘じゃねぇって。」 秋元が調子付く。 「なんかさ、そういうエピソードとか無いの?」 「いっぱいあるよな!例えば小三の時のやつとかさ……な!齋藤!」 ここで俺に振るか。せめて自己責任で処理してくれよ。そういう類の打ち合わせを事前にしなかったから、エピソードは自分で用意してるものだと思ったのに。こうなったら、ホラでもなんでも吹くしかない。全く、自分のお人好し加減が嫌になる。
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