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携帯の地図を片手にコウシは宿を探していた。
無事目的の宿にたどり着いた頃には、日が暮れかけており早く部屋を借りようと中に入ろうとしたが、ふと思い出した。
(お金って使えるのかな?)
たまたま近くを通りかかった人に十円硬貨を見せてみると、珍しそうな顔をしていた。おそらく、というより確実にこの世界で使用出来ないことが分かった。
頭を抱えて踞っていると、後ろから声をかけられた。
「どうかしましたか?」
とても美しい顔立ちの女性、というよりは女の子だった。
透き通るような長い茶髪を後ろでひとつにまとめ、羽織った茶色のマントの下には黒のシャツを纏っていた。
コウシは一目で惚れてしまった。激しく鼓動を刻む心臓を落ち着かせ口を開いた。
「じ、実は宿に泊まろうと思ってたんだけど、お金が無くて......」
「そうだったんですか。初対面でなんですが私の家で良ければ、お部屋をお貸ししますよ」
「え?でも、いいの?まだ、知り合って間もないよく分からない男に......」
「はい、大丈夫ですよ」
コウシは絶句した。笑顔でそう言われてはそうするしかないであろう。
「本当?」
「あまり綺麗ではないんですけどね。さ、早く行かないと日が暮れちゃいますよ」
彼女は苦笑混じりにそう言い歩き始めた。
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