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次に視えたのは駅。人の多さや大きさから都心なのが分かる。
「あ、誠也ー!」
宮野に向かって手を振るのは派手な女性だ。
「やぁ、久しぶり」
宮野はそう言って彼女を抱き寄せる。
「どうだった?奥さん」
「相変わらずだよ」
「可哀想」
「お前が言うなよ」
「あははっ、誠也だって人の事言えないわ」
ふたりは仲睦まじく駅を出た。
ヴィジョンはそこで終わった。
(なんだよこれ、どうすればいいんだ……)
洋介は頭を抱えた。真実を伝えるのが洋介の仕事で、いつも通り仕事をすれば恭子は宮野を諦めるはずだ。しかしあまりにも酷な真実を伝えて恭子を傷つけるのは気が引ける。
「あの、占い師さん……?」
心配そうな恭子の声に洋介は我に返る。
「真実をお伝えします」
洋介は震える手でそう書いて恭子に見せる。
「あなたはその男性と来世で結ばれます。子宝にも恵まれて幸せに暮らしていました」
洋介は嘘の来世を書いて彼女に見せた。
「本当ですか!?嬉しい……。私、決めました。彼に告白しようと思います、ありがとうございました。お代はこれで大丈夫ですか?」
恭子は1回分の占い料金である3000円をカーテンの向こう側に差し出した。
「ちょうど頂きました、またのご来店お待ちしております」
洋介は震える字で恭子に伝える。
「本当にありがとうございました!占ってもらえてよかったです。それじゃ失礼します」
恭子は洋介の文字が震えていることに気づかず、店を出た。
恭子が店を出て数分後、洋介は手袋を外すと表の看板を[CLOSE]にした。
「俺は最低の占い師だ、占い師失格だ……」
洋介は絞り出すように呟くと、椅子に腰掛けすすり泣いた。
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