強引な手練手管

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出社するとジロさんが私たちを手招きした。 「蒼!先代からたった今、連絡が入った。凄い内容だ」 ジロさんは興奮していた。電話を振り回している。 「録音されてるから聞いてくれ!ビックリしすぎて、髪がサラサラになりそうだ!」 私たちは電話の再生ボタンを押した。 『ジロ。伝えてほしいことがある。 希子さんへ。縁談を私からお願いしておいて、顔合わせにも出られずにすまなかった。 ここのところ、体調を崩していてね。 気が弱くなっているところに色々な話が舞い込み、混乱したせいか、君たちには迷惑をかけた』 謝罪のあと、先代が私に向けた言葉。 『希子さんに。 私が所有している、ラ・カンパネラの株式をすべて、無償で譲渡したい』 「……え?」 私は立ちすくんだ。 (なに?どういうこと?) ジロさんが説明してくれる。 「つまり、結婚のお祝いとしての譲渡だ。 後日改めて日取りを設けようって話。 ……これでM&Aは完全に消える。 君はラ・カンパネラの社長夫人になり、蒼に続く株主として、経営に参加するんだ」 (嘘……) 「小早川希子は、株主として二番目の地位になる。 親族経営の我が社にとって良い話だよ。君は蒼の妻になる人だから」 私は目の前が真っ暗になった。これでは逃げるに逃げられない。 しかし。 容赦なく、会席の日は迫ってきた。 「……」 (せめて……。せめて、株式が完全譲渡されるまで私は小早川希子でなくてはならない。 ああ、だけど。実際の希子と蒼さんは結婚しないわ。 それに理沙さんはどうなるの? 私が希子じゃないとバレた時はどうなるの? 私は罪に問われるけど、蒼さんにはスキャンダルになる。 ラ・カンパネラのイメージが地に落ちる。 どうしたらいいの……!)
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