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「まったく、悪知恵だけは働くやつだな。近藤さん、どうだ」
「それでいいだろう。総司、ちょっと中富くんを呼んで来てくれ」
「承知」
沖田はスッと立ち上がると、部屋を出た。やがて足音が遠ざかり、部屋の中は静かになった。
「近藤さん、他のやつには知らせるか」
「そうだな。試衛館の仲間には話しておくかな」
琉菜はそんな近藤と土方のやり取りをぼんやり見つめていた。
トントン拍子に進んだ今の出来事を振り返る。
賄い…か。
ちゃんとできるかなぁ。
それより何より、あたし、本当に幕末にいるんだなぁ。
琉菜は目の前に置いてある携帯やペンケースを見た。
中学の時からの愛用品は、今この場所で見るととても奇妙なものに見えた。
「先生、中富さんを連れてきました」
沖田の声に琉菜はハッと我に返った。
中富さん……
どんな人なんだろう。
あたしの、ご先祖さま…
「入りなさい」
近藤の合図で障子が開いた。
「失礼します」
沖田ではない声がした。琉菜はその声に聞き覚えがあった。
沖田が入り、先程より少し琉菜寄りに座った。
そして次に、声の主が部屋に入ってきた。
琉菜は目を見張った。
中富は、あまりにも瓜二つだった。琉菜はまるで鏡を見ているような気分になった。
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