3.屯所へ(後編)

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 琉菜が同じ髪型にしたら見分けはつかないだろう。  そして途端に琉菜は声の正体がわかった。  それは彼女自身が発している声。  自分で聞く自分の声は、外に発しているそれと微妙に異なる。  それゆえに、すぐには気づかなかった。だが、つまり近藤らにとっては2人はまるきり同じ声だということになる。  総髪を髷に結った少年は、同じく琉菜を見て目を丸くした。  2人の唯一違う所と言えば目くらいだった。  恐らく今までにいくらか死線をくぐってきたのだろう。中富の目は琉菜にはない鋭さを宿していた。 「中富くん、まずは座りなさい」  近藤に言われ、中富はぎこちなく近藤と沖田の間に座った。  沖田が琉菜に目を向けた。 「琉菜さん、こちらは一番隊隊士の中富新次郎さん。中富さん、こちらは琉菜さん。一応、今日から新選組の賄い方…なんですけど」 「なんですけどって、なんなんですか!?この女…」中富はまじまじと琉菜を見た。 「お前の孫の孫みてえなもんだ」土方がぶっきらぼうに言った。 「は!?」 「つまりですよ、未来から来た中富さんの子孫の方…というわけで」沖田が言いにくそうに言った。 「沖田先生、言ってる意味が全っ然わかんないんですけど」 「あはは、ですよねぇ」     
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