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1.時の祠
2018年 4月
「高校かぁ、楽しみだなあ」
少女はにっこりと顔を綻ばせ、隣を歩く母を見た。
「楽しみなのもいいけど、勉強もちゃんとしなさいよ?あと、はしゃぎ過ぎて問題起こさないように」
「今日が入学式だよ?いきなりそーいうこと言うわけ?」
「はいはい、ほら、曲がるわよ」
少女の名前は宮野琉菜。ごくごく普通の高校生、になる予定である。
「なんかさっきから曲がり角多くない?」
「そうね。京都っていうのは道が碁盤の目みたいになってるからね」
宮野家は琉菜が中学を卒業するまでは東京に住んでいた。
だが父親の仕事の都合もあり、琉菜の高校進学を境に京都に引っ越してきていた。
「あら?」母、裕子がぴたりと立ち止まった。
「どしたの?」
「道…一本間違えちゃったみたい」
「えーっ?」
「大丈夫大丈夫、またこの先の角で曲がれば元の道に戻れるんだから。京都って便利ねえ」
琉菜は訝しげな視線を裕子に投げた。
すると、ビュウッと強い風が吹いた。
琉菜も裕子も舞い上がる砂埃に目を閉じた。
やっと風が収まると、2人はゆっくりと目を開けた。
「春一番ってやつ?」
「そんなわけないでしょ。春一番っていうのはもっと早く吹くわよ」
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