2.屯所へ(前編)

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2.屯所へ(前編)

 新鮮グミ?じゃないよね…  でもどっかで聞いたことある。確か…  琉菜はハッとした。  引っ越しで京都に着いたあと、裕子と共に市内観光に出かけた時のことを思い出した。  あれは清水寺でのこと。寺へと続く参道には様々な土産物屋が立ち並んでいるのだが、いろいろと店先を眺めた琉菜は裕子に尋ねた。 「ねぇお母さん、あれ何?」 「あれって?」 「ほら、水色に下にギザギザ模様があって、誠って書いてあるやつ。なんかさっきからよく見るけど…」 「あれは水色にギザギザじゃなくて浅葱にだんだらっていうのよ。新選組の旗なの」 「新鮮グミ?」 「あんた、食べ物じゃないわよ」  裕子はコホンと咳払いすると説明を始めた。 「新選組っていうのはね、幕末…幕末ってわかる?江戸時代の終わりのことね。その幕末に京都で活躍した警備隊のことなの。今でいうと警察みたいなものかしらね。初めて聞いたって顔ね。まあ仕方ないか。たぶん歴史の教科書には出てないから」 「なんで?」 「要するにマイナーなの。歴史の裏舞台の人たちって感じかな。でもかっこいい隊士がいっぱいいるからファンは多いのよ。お母さんは土方歳三が好きだなー。すっごいイケメンなんだから」     
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