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3.屯所へ(後編)
琉菜は近藤と土方を見た。2人とも少し暗い顔で琉菜を見ていた。
やがて、土方が口を開いた。
「お前、未来のこと、洗いざらい話せ。それで信じてやる」
「おいトシ!」
近藤が土方を制した。
「そんなことして何になる!我らは上様に尽くし、国のために働く!それでいいじゃないか!」
「近藤さん。きれい事言ってる場合じゃねえぞ。あんたは怖いんだろ。日本がこの先異国に乗っ取られるって聞いちまうのが。それに、長州の動きを先読みできりゃあ、こっちに分があるんだ」
「怖いものか!だがなトシ、今お前がやろうとしてることは、士道に背くことなんじゃないか?」
土方はハッと口をつぐんだ。
「すみません、琉菜さん。今のは聞かなかったことにしてください」近藤が優しく言った。
「はぁ…」
琉菜は一連のやりとりについていけてなかったが、とりあえず何もしなくていいようだった。
土方は琉菜に小銭を投げて返した。
「足手まといになるなよ」
琉菜は受け取った小銭を手にしたまま土方を見た。しばらくしてそれが許可を示すセリフだということに気づいた。
「いいんですか?」
「土方さんも意地っ張りだなぁ」
「黙れ総司。近藤さん、あんたは」
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