5.町へ

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5.町へ

 食事が終わり、食器洗いも終わった頃には琉菜はもう数時間働いたような気がしていた。が、まだ日は高く、正午は当分先になりそうだった。  この世界で、火おこしやら身支度やらすでにたった1日で琉菜は様々な不便を感じていたが、その中でも最たる不便は、時間の感覚がないということだった。  鈴に聞いても沖田に聞いても中富に聞いても、返事は「辰の刻」だとか「明け六つ」だとか、まるで参考にならない。太陽の高さを見て、なんとなく午前か午後か、ということを判断するしかなかった。  琉菜は「四半時」の休息を終え(四半時というのはだいたい30分くらいなのではないかと琉菜は推測した)、鈴と買い物に行くことになった。琉菜の着物の買い出しである。  昨日はバタバタと屯所にやってきたので、街並みをゆっくり見る余裕はなかったが、改めて見ると幕末の京の街はなんとも風流であることに琉菜はすぐに気づいた。  本当に時代劇みたい…  琉菜はしみじみと辺りを見回した。 「どないしたん、琉菜ちゃん」 「え?いや、なんか…スゴいなあって…」  鈴が不思議そうな顔をしたので琉菜は付け加えた。     
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