第1章

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 「あそこに少し、屋根みたいな物が見えたからこの方向でいいはずだけどな」 車から降りて、歩き出し約30分近くかかったであろうか。噂の廃墟が少しずつ見えてきた。かつては、立派な門扉があったと思われる場所は、今や錆が浮きすぎており、触れるのも危ないと思わせる有様。屋敷の壁にはいたる所に蔦が生い茂っており、侵入者を拒む様相である。ドアは両開きに見えるがすでに片側は開かれていた。 「やっと着いた。疲れた...」   体力の無い圭太はすでに満身創痍である。 一方、体力に自信のある結城は落ち着いた呼吸のまま、圭太を見ていた。    「少し休んでから入るいか?まだ本格的に真っ暗にはなっていないから」 結城は呼吸の乱れている圭太を気遣い、門扉付近で立ち止まって屋敷を見上げている。    「いや、大丈夫だから先に進もう。目当ての建物にたどりつけたから早く入ってみたいしね」   圭太は腕で額の汗を拭い、服の裾で眼鏡を拭いた後、徐々に呼吸を整えていく。  「じゃあ、今から入ろう」 結城の一声で二人は屋敷内に足を踏み入れていった。 屋敷内は外よりも荒れており、窓ガラスはほぼ全て割れている。床はかつて、絨毯が敷かれていたのだろうか。今ではめくれあがっており、歩行の妨げにもなりかねない状態である。二人が歩く度に、床からギシギシと断続的に音が響いてくる。外の薄暗さと比べると屋敷内はすでに辺り一面真っ暗闇が広がっていた。二人は懐中電灯を点け、探索を始める。  「書き込みによるとこの屋敷は全部で3階建てで、玄関から真っ直ぐ入ったら、すぐに螺旋階段が見えるとか」  「その螺旋階段すら見当たらないな。書き込みは当てにならないな」  「あと、幽霊の情報としては、どこからともなく女の泣き声が聞こえる。髪の長いのがいたという情報もあれば、反対に短いという書き込みもあった。泣き声ではなく、笑い声が聞こえたというのもある。やっぱりあまり当てにならないか」  「書き込みは一人の人物が複数回書き込んでも分からない仕様だからな。そもそも、廃墟の雰囲気にのまれて、大方聞こえはしない声が幻聴となって聞こえたんじゃないかな。 女の容姿もばらばらだしな。幽霊なんかいない。それを証明する為に今から録画と撮影始めるぞ」  「了解。まあ、いつも通り、一通り撮影しますかね」 二人はすでにスマートフォンを手に取り、
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