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「早く帰ろう。今さっきの映像も何かの間違いだって。もう一度見直したら、意外とスマートフォンのほうがおかしかったってなるかもしれないだろ」
結城は懸命に無い知識を振り絞って、圭太に話しかける。それでも、圭太には声はとどいていないようだ。ふと、圭太が声を出し始めた。
「始め、門扉から屋敷に向かうまでに沢山窓が割れてると思って、すぐに録画開始したんだよな」
「すると、3階の窓付近で髪の長い女?のような人が手を振ってるのが見えて...」
「まさか、そんなはずは無いと思って。その窓のあった部屋の真下、一階のリビングを
見て周ったんだ」
「そうしたら、古ぼけたソファーの下に、取っ手のような物が見えて、ソファーをずらしたんだ」
「取っ手に手をかけたら、案外すんなりと
開いて、中に骨が沢山入っていたんだ」
「本物の骨とは思わなかったから、触って確かめようとしたんだ。すると、その骨の隙間から俺のほうをじっと見つめる眼があってさ...」
「その眼も一つじゃなく、複数もあったんだ!信じられるか!?あんな狭い物入みたいな中に沢山の眼が...幽霊なんか信じたくなかったけど、こればかりは...」
「圭太。ごめんな」
結城はそう言って、予めポケットに入れておいたナイフを抜き取ると、圭太の首に突き刺した。ナイフを抜くと血がどんどん溢れてゆく。
「あああああああ!」
圭太は必死に両手で首を押さえるが、血は止まらない。とめどなく溢れていく。両手が真っ赤に染め上げられていく。命が流れ出ていく。ついには意識を手放し、床に倒れこんだ。
数分経ったであろうか。すぐ側には、圭太が絶命する様子をずっと観察し続けていた結城の姿。
「今日も良いシーンが撮れた。これだから辞められない。次は、どの廃墟にしようか」
「おーい!もう降りてきていいぞ!」
その声と同時に、髪の長い女が壁紙の色と同化した棒をつたって降りてくる。ポケットからスマートフォンを取り出した。
「すっごいシーン撮れたよ。家に帰って鑑賞会しよう!もうこれで何人目?」
「ざっと、10人ぐらいか。こいつ、全然幽霊信じてない癖に、加工した映像にも気付いてないのな。ただの馬鹿じゃないか」
「もう死んでるから聞こえてないよ。ゆうくん。早く鑑賞会しようよ。もう一回血が噴き出すシーン見たい」
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