第1章

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結城は予め、廃墟の撮影を彼女、星奈と行っており、あえてスマートフォンも圭太と同機種に変え、アプリの配置も盗み見て、圭太と同じように変えた。車から降りる前に、スマートフォンを入れ替えておけば、気付かぬうちに結城のスマートフォンで録画を始める算段だ。結城のスマートフォンには録画し、加工を施された廃墟の映像がすでに入っている。録画を終えたら、その動画が再生されるように細工も施していた。撮影者が違う為、再生すると違和感を感じると思われるが、結城は入念に圭太が録画を始める位置やこだわりを、今までの廃墟探索で調べ上げていた。    「この動画いくらで売れると思う?俺は結構高値で売れそうだと思うけど」 結城は違法サイトでこの手のシーンを撮り続け、売り飛ばしている。多額の金が手に入る。廃墟には床下収納や地下室があるから、死体の処理もすぐに済む。そして、また、提示板に噂を書き込めば圭太のような人が食らいつく。  「うーん。星奈は100万は行くと思う」  「100万かしけてるな...」 死体の処理を終えた結城と星奈は廃墟の裏に停めていた車に乗り込む。車を発進させ、街のほうへと進んでいく。途中、結城の車を目につかない場所まで移動させておくことも忘れていない。  「今日は時間かかったな。もう少しあいつの性格が分かればもっと早く動画作れたんだが」  「私、まだその動画見てない!どんな風に加工したのか見せてよ」 結城は星奈にスマートフォンを渡した。星奈はすぐに再生を始める。しかし、その顔色がどんどん青ざめていくのが手に取るように分かる。  「どうした星奈。なんかおかしいか?」  「違う。違う。こんなの...」 そう言いながら、星奈はスマートフォンを運転席にいる結城に投げつけた。  「いって!どうしたんだよ。急に」  「動画見て」  「え?」  「いいから!動画見て!」 あまりの剣幕に、結城はたじろぎ、車を止めて自分の加工した動画を見た。星奈が手を振っているシーンに行き当たる。  「私、確かに棒みたいな物に捕まって頑張って3階まで登ったよ。だけど、手まで振ってないの!腕が疲れてて立ってるのでやっとだったから」    「じゃあ、この女は誰だよ...」
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