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噴き出す汗が止まらない。拭う事すらままならない。用紙に着目していた視線が今はコピー機の下に移っているからだ。下からは、水が溢れ出してきている。しかし、コピー機は止まらない。取り出す手も止まらない。もはや、紙の原型は無くなり、水から引き揚げたかのような物質となりはてている。正直、手に取るのも気持ち悪い。けれど、手は止まらない。
「誰か。助けて。助けて!」
声の限り叫ぶが、誰かが駆けつける気配すら無い。窓の外はすでに日が沈みかけている。
ふと、右肩に生暖かい感触があった。床下に張り付いていた視線を無理矢理引きはがし、
右肩に眼をやる。血にまみれた右手がそこにはあった。
「きやあああああああああああ!!」
七海は早く気付くべきであった。埃にまみれた床。ドアを開けた瞬間に自分の足跡以外に、他の足跡があったかどうか。その確認を怠っていた。その時から、すでに異形に手招きされていたことを知らずに...
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