第1章

3/5
前へ
/5ページ
次へ
早く印刷したいという気持ちは募る一方ではあるが、毎日毎日空きが無い。締め切りも迫っている。  「全く候補が無い訳じゃないけど」 七海の頭の中で学校の噂が想起される。印刷室は二つあり、その内の一つは生徒や先生が利用する第一印刷室。実は第二印刷室もあるのだが、この学校の七不思議の一つにも分類されるほど、怪しげな場所だ。  そもそも、印刷室であるのに、コピー機が一台しか置かれていない。さらに、鍵は職員室内に置いてあるが、持ち出そうとすると教師から盛大に怒鳴られ、入ることを禁じられている。理由は不明である。その為、噂が噂を呼び、学校の七不思議にされている。噂には続きがありコピー機から髪の毛が出てくるや、人の顔が印刷される等、どれも陳腐な代物であり、信憑性が感じられない。  「第二印刷室行くだけ行ってみようかな」 噂等全く信じない七海にとって、第二印刷室はもはや最後の希望となっていた。もしかしたら、鍵が開いているかもしれない。その一縷の望みを持って、渡り廊下を小走りで渡っていく。  「やっと着いた...ここで合ってるよね?」 七海が疑問に思うのも無理はない。第二印刷室は二階の一番東側の角に位置している為周りは薄暗く、人の気配すらしない。第一印刷室での喧騒が嘘であるかのようだ。  「開いてるかな」 第二印刷室のドアノブに右手をかける。この校舎は全ての室内がサムターン錠の鍵を採用しており、ドアは押すか引くかの二択に絞られる。さらに、外側から開ける場合は、必ずドアノブを捻り、押して入る形となっている。よって、その形式を思い出しながら、七海はドアノブを捻り、ドアを押そうとした。 しかし、ドアノブを捻るが、ドアは押しても微動だにしない。反対に引いてもみたが、やはり動かなかった。  「やっぱりだめ。また明日第一印刷室に行こう」 そう呟きながら、後ろを向き元来た道を歩こうとした瞬間、  カチャリ サムターン錠のおりる音がした。この場所の周辺には部屋が無い。さらに音の出所は七海のすぐ後ろであった。  「中に誰かいますか?」 ドアを開けず、少し大き目の声で、第二印刷室のほうに呼びかける。しかし、反応が無い。先ほどの音が幻聴であるかのように。  「入っていいですか?入りますよ」 やや不気味さを感じながら、恐る恐るドアノブを捻り、ドアを押す。開いた。七海はすぐに室内に入らず、ドアを半開きにしたまま
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加