第1章

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中の様子を探る。床はどの教室とも同じ色の薄茶色をしている。長年使われていないせいか、うっすらと埃をかぶっていることが、すぐに見て取れた。窓はドアの正反対の場所に位置しており、もちろん閉められている。  「失礼します。入りますよ」 恐々と口にしながら、足を一歩ずつ踏み入れていく。床を踏む度に埃がまい、歩いた後は、雪の上のように足跡がくっきりと残っていた。室内を見渡す。約10畳ほどのスペースの真ん中に大きなコピー機が一台。ただそれだけが鎮座しており、机や椅子、本棚すら見受けられない。何より、  「誰もいない...」 そう誰もいない。窓には鍵が掛かっており 窓から出て行ったとも考えられない。もう一度室内を見渡すもやはり誰もいない。七海のみである。  「気味悪いけど入ることできたし、印刷も早くしたいから、ここでコピーしよう」 一抹の不安を感じながらも、コピー機に近寄る。コンセントが差さっていることを確認し、コピー機の上にうっすらと積もっていた埃も制服の袖で払う。印刷用の用紙もカセットを開き、枚数分あることも確認済だ。コピー機の電源を入れ、原稿をセットし、必要部数の数値を入力しコピー開始のボタンを押す。 すぐにコピー機は動き出し、印刷を始めた。 出力されてくる用紙を見て、インクもあることを確認する。  「良かった。これで間に合う」 安堵の息をつき、コピー機から出力されてくる用紙を見続ける。ふと、違和感を感じた。  「あれ?何だか文字が滲んでる?」 出力された用紙の右上「春」の漢字が線一つ一つを判別できない程、まるで上から水滴を一粒落とされたかのように印刷されていたのである。  「何でだろ。インクも開けて確認したのにこれじゃあ、意味ないよ」 七海はすぐに印刷中止のボタンを押す。用紙は変わらず吐き出し続けられる。  「あれ...何で?故障?」 疑問に思いながらも、何度も印刷中止のボタンを押す。何度も。何回も。用紙は一定のペースを保ちながら出力されていた。不思議と用紙を手に取り続ける自分自身の姿。  「嫌だ。嫌だ。なんで、手が、止まらないの」 出力される紙を手に取り続けるのが義務であるかのように、すぐに用紙を取り上げてしまう。嫌でもインクの滲みが拡大していることに気付く。用紙自体も、徐々に濡れていることが分かる。  「はあ...はあ...はあ...」
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