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それもそうだな。佑次はしゅんと肩を落とし苦笑を浮かべる。
「野球部はどうかわかんないけど、吹部の条件は、きっと伝統の面を考慮して慎重に出した答えなんだと思うよ。楽器の音が、とは言ってるけど、学校の備品として一応楽器は揃ってるわけだし。熱いパッションでどこまでやれるかは、浅石次第だよ」
微苦笑しながら指の腹で押し上げたノンフレームがきらりと光る。佑次はそれ以上なにも言えなくなり、無言でそれを見つめるしかなかった。
思えば、この話を持ち掛けたときの吹奏楽部も、自分たちでは判断できないからと綿貫先生に相談しに行ったという生徒会も、佐々木でさえ、どちらかというと消極的な意見からまず入った。綿貫先生も「やってみましょう」とは言ってくれたが、そう言う前の思案顔や鼈甲のループタイの鈍いきらめきが、今さらながらひどく気になってきた。
まだまだ簡単に考えていたのだろうか。甘い考えだったのだろうか。
――生徒総会で生徒にかけ合う前から、なんか大ごとになってきたぞ……。
「とりあえず箱石のほうは俺がご機嫌取りしておくから」
そう言ってくれたノンフレームとは、職員室からほど近い廊下で別れた。
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