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「吹奏楽部から出された楽器購入のリストを生徒会で精査してきました。ひとつひとつじっくり話を聞かせてもらったので、生徒会のほうとしてもこれで予算を組んでいただけないかという結論になって。早いほうがいいと思ったので、持ってきたんです」
「そうですか。生徒会のみなさんはさすが仕事が早いですね。私も目を通しておきます。たぶん、来週の早い段階で返事ができるかと思いますので、待っていてください」
「はい。よろしくお願いします」
「お願いします」
一礼するひらりに倣い、景吾も頭を下げる。綿貫先生はそんなふたりをにこやかに眺めると、「ご苦労様でした」と労いの言葉とともに見送ってくれた。
職員室を出たひらりと景吾は、その場の流れもあって一緒に昇降口へ向かうことになった。だいぶ日が長くなってきたとはいえ、五時を過ぎれば空はなんとなく薄暗い。しかもあいにく今日は曇りだ。雨が降りそうな気配は遠いが、なんとなく空気が湿っている。
「箱石は今日もこれから塾?」
「うん。自分から通わせてくれって頼んだから。また勉強しに行くよ」
「何時から?」
「六時半からかな。え、なんで?」
「いや、愚痴があるなら聞こうかなと思って。まだ五時過ぎだし、俺も時間あるし」
「うはは。とか言って、本当はデートに誘う口実なんじゃないの~?」
「んなわけあるか、バカじゃねーの」
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