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薄暗くなった廊下をてくてく歩きながら、そんなじゃれた会話をする。
わかっている、生徒会の仕事や勉強で手一杯のひらりの息抜き相手に自ら志願してくれていることくらい、本当はちゃんと。自分のことだけでいっぱいいっぱいになってしまうところがあるひらりとは違って、景吾は本当の意味で全体のことを見る力を持っている。
嫌なやつだと思うこともしばしばだが、それは基本的に相手のことを考えているからだ。ひらりが変に卑屈になってその気遣いを悪いほうへ取りがちなだけで、景吾はだいたいの場合において優しいし、ひらりの本当の気持ちを上手く汲み取ろうとしてくれる。
歳のわりに達観していると言えなくもないが、でもそれが、とてもありがたい。
「まあ、今のところは大丈夫だから。愚痴りたくなったら、夜中でも電話するし」
「それ、普通に安眠妨害だから。ぜひやめてくれ」
「あはは。大きな問題が起こらない限り、それはしないよ」
「それもフラグっぽいからやめてくれ」
「あ、そう?」
「そうだろ。これから体育祭もあるのに、仕事を増やされてたまるかよ」
景吾がそう一蹴したところで、昇降口に着く。それぞれ下駄箱から靴を取り出し、駐輪場まで並んで行く。自転車のチェーンを外すと、あとはもう好きに帰るだけだ。
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