22人が本棚に入れています
本棚に追加
当事者でなければ知らん顔もできよう。けれど佑次は、その渦中にいる。しかも困ったことに中心、まさに台風の目である。目の中は穏やかではあると聞く。でもひとたび周りを見回せば、自分のせいでみんなが強風に煽られ成す術なく振り回されている姿が目に入る。
自分こそしっかりしなければいけない。
ようやく自分が巻き起こした事態であることを自覚し、佑次は思いを改めた。けれど、そう思えば思うだけ、どんどん孤独に追い詰められていくような気がしてならなかった。
そんな思いに駆られている間にも、カレンダー上では今週の後半には六月に突入してしまうところまで、五月は消化されていた。衣替え、髪がうねる梅雨、そして野球応援までは、一ヵ月と少し。もう思ったより時間はないのに、悠長に構えている暇なんてないのに、俺は散々みんなをひっかき回してまで、いったいなにがしたいんだろう。
佑次のうねうねの髪は、日を追うごとにしおれていくばかりだった。
*
「はあ、もうっ。教頭ってほんっとムカつく! なんなのあれ、本気で検討してるって顔じゃないじゃん。うちらに散々頭を捻らせておいて、その努力のあとを見ようともしないなんてさあ! だから離婚されたんだよ! 元奥さんの気持ち、今ならすっごくわかる!」
最初のコメントを投稿しよう!