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1 イベント
本日はゴールデンウィークの5月5日。佐藤遙見は期待に胸を高鳴らせていた。
「いよいよだ。憧れの森崎選手に会える。」
この日、地元プロサッカーチーム「葦河原リードリヴァーズ」に所属する森崎誠佑が高校生を指導するイベントがある。佐藤は幸運にもこれに参加することができた。
イベントは葦河原高校のグラウンドで開かれる。佐藤ら参加者がゴールの裏で待っていると、森崎が現れた。
「おはようございます。本日、君たちを指導する森崎だ。今日1日、楽しく頑張って、そして何か吸収してほしい。ま、くれぐれも怪我には気をつけるように。」
森崎は笑顔で明るく挨拶した。
「それでは、参加者の確認をするから、名前を呼ばれたら返事をするように。1番、下村康文くん…。」
次々と名前が呼ばれる。
「8番、佐藤遙見くん。」
「はい! 佐藤遙見、高1です。」
「高校生なのはわかってるよ。」
森崎が冗談めかして返す。佐藤は気恥ずかしく顔を赤らめたが、しかし、森崎から言葉をかけられたのが嬉しかった。
これでかえって緊張がほぐれ、佐藤の動きは普段よりも良かった。上級生にもついていき、森崎から指摘された点を修正していった。
イベントの最後は、参加者が2チームに分かれての試合だった。
両チーム無得点のまま終盤へ。味方がパスカットしたボールが佐藤に飛んできた。
「ゴールまではまだ少し距離がある。ここでシュートを打ったらセルフィッシュか。いや、こんなことで遠慮していたら上には行けない!」
佐藤が思い切りよく放ったミドルシュートは、ゴールに突き刺さった。
「やった! これは森崎選手にアピールしただろう。」
しかし、試合後、佐藤は森崎と言葉を交わす機会もなく、イベントは終了した。
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