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――夢の中に迷い込んだようだと、此花(このか)は錯覚した。
「彼女は、『ドール』なんだよ」
「……はい?」
そして、混乱する。
宮司から告げられた、その言葉に。
「サクヤ。今日から君とお勤めをともにする、末永此花君だ」
宮司の言葉に、彼女は此花に近づいてくる。
美しい黒髪と、淡い微笑み。
まるで、神話の乙女のよう。
彼女は――『ドール』と呼ばれる、人の似姿をした、人工人形。
「これから、よろしくお願いします」
微笑まれ、此花は困惑する。
……みなが想い描く、理想的な巫女の姿を、目の当たりにしているからだ。
その美しさに、未熟な自分を、情けなく想いながら。
同時に此花は、言い知れない喜びを、知らずに感じていた。
――幼い頃からの憧れが、眼の前の現実として、現れたことを。
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