永久に咲く祈りを

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 ※※※  彼女を受け入れた宮司も、とりまとめをする禰宜も、指導役である巫女長も、サクヤのことを大切に扱った。  此花もまた、日々魅力的を増していくサクヤを目標として、お勤めに励んだ。  だが……人間の考えは、十人十色。  ある日、サクヤが御守を授与している時、一人の参拝者が呟いた。  "――作り物に渡されるなんて、これは偽物なのかって、感じちまうね" (なに、その言い方っ……)  境内で他の作業をしていた此花は、顔をしかめ、参拝者に視線を向ける。  次には、近寄って思いの丈をぶちまけようと、足の向きを変えると。 「待ちなさい」  巫女長に腕をつかまれ、制止される。 「どうして、ですか」 「あの方の想いを、あなたが偽物と断じること。それは、サクヤが受けた行為を、返すことに他ならない」 「でもっ……!」  此花が納得できないうちに、参拝者の姿はすぐに消えてしまった。  ――サクヤは変わらず、授与所でお勤めを続けていた。  何事も、なかったかのように。  今日のお勤めを終えた、夕暮れの境内。  すっきりせず、此花はサクヤに話しかける。 「サクヤ、大丈夫?」  なんのことでしょうか、と、変わらぬ顔で答えるサクヤ。  耐えるでも、哀しむでも、怒るでもない。  まるで――人形のような表情。 「……私は、さ」  その表情に、胸を捻られるように感じた此花は、口を開く。 「サクヤのこと、憧れなんだ。巫女としても、友達としても、目標なんだって想ってるから」  此花の言葉に、少しだけ、サクヤの眼が見開く。 「だから……そんなふうに、全部、受け入れなくてもいいんだよ」 「……はい。その言葉だけで、十分です」  夕暮れに照り返される、サクヤの微笑み。  此花は、その微笑みが心からのものであればと、願うしかなかった。  ――サクヤへの風当たりは、その参拝者だけでなく、しばらく強かった。  だが、光が強ければ、惹かれるものもまた多い。  巫女として、美しく勤め続ける彼女の姿に、魅了される人々もまた増えていく。  みながサクヤの美しさに気づくほど、此花は、嬉しい気持ちになるのだった。
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