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(サクヤと舞える。憧れだった、神楽を)
――幼い頃に見た、桜舞い散るなかでの神楽。
――今もまだ、眼に焼付くほど、あの日の美しさが此花の心にある。
それから、日々の奉職の合間をぬって、舞を磨く日々が始まった。
二人で一緒に動画を見たり、教えを復習したり、必死に練習を重ねていく。
『ドール』であるサクヤはネットワークを通じ、自身の知識と身体へ、集めたデータを反映させる。
(私も、がんばらなきゃ)
対する此花は、ひたむきで情熱的に、自分がかつて夢見た舞手を目標にする。
ミスを犯しながらも、人間らしい舞を踊り、生きている者の息吹を感じさせる。
二人の舞は、完全性と不完全性の、対比のよう。
その異なる輝きは、だからこそ、人の眼を惹きこんだ。
禰宜や巫女長、一部の氏子からの評判もよく、練習は順調に進んでいた。
確かな自信は、余裕を与える。
あれだけ不安だったのに、今はもう、此花は鎮花祭の日を心待ちにするようになっていた。
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