丑の刻参り

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自分一人、家に置いて行かれたことへの反抗心が俄かにわき立った。 私は物置の扉に手をかけ、恐る恐る扉を開いた。 なんてことはない。中はなんの変哲もない物置だった。 付け加えるなら、一般的な家庭よりずっと小汚くて整理されていない物置だ。 「こんなものよね。秘密なんてそうホイホイあるわけないわ」 腹いせに秘密を暴いてやろうなどと、意気込んでいた自分が恥かしい。 すっかり脱力してしまった。 物置の中にはクマデ、釣道具、バスケットボール。 乳母車や幼稚園の時の縄跳びなどという、明らかに不要な物まで入っていた。 あまりの雑多さに、母のだらしなさを見せ付けられるようで溜息がでてきた。 このぶんだと、お化けが出るという戸棚にもろくな物がはいっていないだろう。 溢れるものを掻き分け、私は倉庫の一番奥の戸棚に近付いた。 私は軽い気持ちで戸棚に手をかけた。 戸棚の中には、昔話に出てきそうな行李が入っていた。 これが母がお化けを使ってまでも子供に見せまいとした宝物のようだ。 けっこう大きい。中に何が入っているのだろう。 私は行李を取り出して倉庫の床に置いた。 大きさに反して、重さはそんなにない。 誇りに塗れて薄汚れた薄汚れたフタを持ち上げる。 中には、真っ白な着物が入っていた。 「なんでこんなもの、わざわざ倉庫に入れてるのかな?」 衣装ダンスにはいらない、あまり着ない衣装がこの行李に詰め込まれているのだろうか。 そんなもの、わざわざ隠すものでもないのに。 くだらないものが入っているのだろうと思ったが、一応中身を全てあらためてみることにした。
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