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玻璃の静かな答えに白夜は、初めて自らの意思で真正面から玻璃の若竹色の瞳をのぞきこんだ。
そして、また、語感をしっかりと味わいながら繰り返す。
「花、浅葱、色………。」
「そう。花色がかった浅葱色のこと。鮮やかで華やかな青色なの!」
玻璃の言葉に白夜は驚き、喜色を隠すことなく顔にだす。
「あぁ、だから______。」
ポツリと白夜が呟いたその言葉は、玻璃に届くことなく、ひやりとした空気にとけこんでいく。
「え?」
そう聞き返した玻璃に白夜は苦笑いをこぼしながら。
「そんなことを聞きに、君はわざわざこんな俺のところに来てくれたのか。
………君も物好きだな。」
先程と全く同じ言葉であるものの、先程とはまるで違う、優しな口調で伝えられたそれに玻璃は少しむっとして。
「どうして、“こんな“なんていうの?
自分をそうやって卑下するのは、日輪君をステキだと思う私まで馬鹿にしてるのとおんなじなんだから!」
「…お、おう。なんかごめん。」
そう、なんだかよく分からないまま謝る白夜を見ながら、玻璃は続けた。「それに」
「うさぎは悲しいと死んでしまうけれど、
人は寂しいと狂ってしまうの。」
「狂いながら死んでいくのは、ただ死んでいくのよりずっと悲しくて、ツライことだと、私は思ったから………。」
ぼんやりと美しい若竹色の瞳を瞼で半分隠し、白夜を見つめる玻璃を白夜はじっと見つめて。
やがて、何を思ったのか、くつくつと一人で笑い始めた。
「その通り……かもな。君は正しい。
………でも小学五年生の女の子が言うような言葉じゃあるめーな。」
そう言いながら手元にあった本をパタン、と無造作に閉じて。いまだ、楽しそうに笑う白夜に玻璃は更にむぅっと膨れた。
「日輪君こそ、小学五年生男子の発想と発言じゃないでしょ!」
そんな玻璃の反論も白夜の手にかかれば、なんてことない。
白夜は親がわが子の可愛らしいわがままをするりとかわすような要領で、はははと笑いながらあっさりと受け止めた。
「それも違いねーや。」
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