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それから、ちゃっかり白夜と仲良くなって当然のように、いつも隣にいられるようになったのは良かったんだけど。所詮、ソコどまりだ。いつまでも、友達のまま。
玻璃にとっては今の心地よい関係を崩すくらいなら、このままでいい、と。白夜の隣で友達として笑っていられるだけで満足なんだと、言い聞かせてきたのだけれど。
いやいやいや。いやいやいやいやいやいや。
浅葱って誰?何?私、聞いてないんだけど??
そりゃあ、玻璃にしてみれば、白夜が女の子に告白されてるだなんて見慣れたものだ。実際、白夜がGFを連れてきたこともある。
それでも。玻璃は知っている。これまで、白夜が自分から他人に興味を示すことだなんて、なかった。だから、いくら白夜が告白されていようと、白夜のことを一番知っていて、一番近くにいるのは自分なんだ、という自負が玻璃を支えてきたのだけれど。
玻璃はまたも、重いため息をついた。
今日はもう帰ってしまおうか。そんな考えが玻璃の頭をよぎる。玻璃には白夜に好きな人がいる、と聞いたその日に冷静に友達を装える自信がなかったから。
そう思い立ち、かばん片手に椅子から立ち上がった瞬間。
「知っているか、玻璃。
ため息を一つつくと幸せが一つ逃げていくのだぞ?」
玻璃のすぐ後からよくよく見知った声が玻璃を呼び止めた。あまりの突然の出来事に玻璃はビクッと全身をこわばらせて。反射的にうわぁ!と叫びながらちょうど片手に収まっていたかばんを声の聞こえた後方へ投げつけた。
「ほら、物にはやさしく。かばんさんが泣いているだろう?」
おもいっきりかばんを投げつけた反動で、肩で息を切りながら後ろを振り向いた玻璃の目に写ったのは。
あんなに強く投げつけたにも関わらず、何事もなかったかの様に、軽やかにキャッチしたかばんを玻璃に差し出し、爽やかに微笑む男。
絶対、絶対!!わざとだ!
こめかみをピクリとひきつらせた玻璃を見て、男は更に爽やか度をあげて笑った。
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