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「なぁ、あの化け物、いっつも無表情だよな。」
教室の片隅で呟かれた、明確な悪意と敵意を含まれた一言が全ての発端だった。
化け物が本気で怒ったら、本気で泣いたら、どんな顔をするんだろう。
自分たちとは違う、異色なモノなんだから何をしても許される。
それがクラスの中での共通認識で、実際、彼になにをしても大人たちは怒らなかったし、むしろ大人たちのほうが率先して、彼を社会から排除していたのを彼等はよく見ていたから。
「お前、友達いねぇだろ?しょうがねぇから、俺たちが一緒に遊んでやるよ。」
と、6,7人のクラスの男子たちが下劣な笑みを浮かべながら、放課後一人、帰り支度を整えていた白夜に告げているのをみて、玻璃はすぐに彼等が何をしようとしているのかを察した。
面と向かって悪口を言っても全く動じない彼にしびれを切らしたんだろう、あいつら、みんなで寄ってたかって日輪君に暴力をふるうつもりなんだ。
まわりはニヤニヤと笑いながらそれを見ているクラスメートたち。白夜の逃げ場はどこにもなくて。
あぁあ、日輪君かわいそうに。
なんて玻璃は思いながらも、なにも行動を起こすつもりはなかった。元々、玻璃は強い正義感の持ち主ではなかったし、なんとなく白夜を虐めるクラスメートたちの心情も理解できてしまったからだ。
皆、本当は怖いんだろうな。あの異色な髪と瞳が。
だからああやって大多数で日輪君を虐めて、その現状に安心するんだ。
が。
結論から言うと、白夜に暴力が振るわれることはなかった。
なぜなら、白夜はそんな男子たちの言葉を完全に無視して自分の荷物片手に教室を出ていこうとしたからだ。
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