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未だ、呆然と白夜の去っていった方向を見つめる生徒たちの中。
玻璃だけが乱雑に自分の荷物をつかんで走り出していた。
先刻、白夜の見せた妖しい笑みが玻璃の心を掻き立てる。
なんで、こんなににも胸が痛いんだろう。
彼と話してみたい。彼の心に触れてみたい。
放課後、白夜が向かう場所を玻璃は知っている。
「はぁっ、はぁっ」
玻璃は息を切らしながら、走り続ける。
一階、二階、三階………。帰宅部にこの仕打ちはつらい。
目指すのは、玻璃の記憶の中では、一度も使ったことも入ったこともない、その存在すら知らなかった教室。
西棟四階の一番端に位置する空き部屋。
やっとたどり着いた、その教室は。
普段は鍵をつけられているはずなのに、今は鍵が今ははずされていて。
ゆっくりと息を整えるために深呼吸しながら、玻璃は教室の扉に手を掛けた。そのまま、置いた手に力を入れて。
ガチャリ。
重たい音をたてながら開いた扉の向こうにあったのは。
古ぼけた教師用の机一台と、同じく教師用の事務椅子一脚。
そして、その椅子の上で驚いたように目を見開いたまま固まり、こちらを見つめる日輪 白夜、一人だった。
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