8.金剛 玻璃

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未だ、呆然と白夜の去っていった方向を見つめる生徒たちの中。 玻璃だけが乱雑に自分の荷物をつかんで走り出していた。 先刻、白夜の見せた妖しい笑みが玻璃の心を掻き立てる。 なんで、こんなににも胸が痛いんだろう。 彼と話してみたい。彼の心に触れてみたい。 放課後、白夜が向かう場所を玻璃は知っている。 「はぁっ、はぁっ」 玻璃は息を切らしながら、走り続ける。 一階、二階、三階………。帰宅部にこの仕打ちはつらい。 目指すのは、玻璃の記憶の中では、一度も使ったことも入ったこともない、その存在すら知らなかった教室。 西棟四階(最上階)の一番端に位置する空き部屋。 やっとたどり着いた、その教室は。 普段は鍵をつけられているはずなのに、今は鍵が今ははずされていて。 ゆっくりと息を整えるために深呼吸しながら、玻璃は教室の扉に手を掛けた。そのまま、置いた手に力を入れて。 ガチャリ。 重たい音をたてながら開いた扉の向こうにあったのは。 古ぼけた教師用の机一台と、同じく教師用の事務椅子一脚。 そして、その椅子の上で驚いたように目を見開いたまま固まり、こちらを見つめる日輪 白夜、一人だった。
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