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まさか、自分の見つけだした空き部屋を訪れる人がいたとは……と白夜は呆然としながら、扉のところで自分と同じように呆然と突っ立っている少女、玻璃に声をかける。
そして、鼻の上に乗せていた眼鏡をコトリと机上においた。
この眼鏡は遠くを見るのには適さない。
外したときに少女がはぅっと、残念そうな声を上げたのはきっと気のせいだ、と彼は結論づけて。
「私は金剛 玻璃。
えーと、一応日輪くんと同じクラスなんだけど。」
「ごめん、知らない。」
即答である。自分のことを覚えてもらっていないというのは中々心にぐさりと来るものだけど。
まぁ、予想通りかな。
なんて、はははと乾いた笑いをもらしながら、言葉を重ねた。
「うん、覚えてくれてないだろうなぁっておもってた。
で、ここに来たわけは……その…三日前に日輪くんがここに入っていくのをみつけて。気になってたからで。」
「…………あぁ。三日前に俺の後ろをつけてきた気配は君だったのか。」
「つ、つけるって!」
なるほど、とうなずく彼の言い分に玻璃は異議あり!と玻璃は抗議しようとして、実際その通りだからなにも言えない。
というか、気づかれていたのか!と玻璃は内心、冷や汗をだらだら流しつつ。
驚いたのは、数秒だけ。すぐにいつも通りの達観した無表情に戻った白夜はスッと玻璃から視線を外し、手元の本をその冷めた瞳に映した。
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