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 あれから一週間。郁人は相変わらず俺を避けている。無理もない。  俺も郁人にどんな顔をして会えばいいかわからず、互いに関わらないようにしていた。  あの時なんであんなことをしてしまったのか、自分でもよくわからない。  居酒屋でキスされたとき、俺は怖かった。郁人の知ってはいけない所を知ってしまった気がしたからだ。  本当は郁人の気持ちに気づきたくはなかった。気づかないまま、このまま友達としての関係を続けていたかった……はずなのに。  部室であいつと話していたとき、俺の頭の中はあの夜の郁人の顔でいっぱいになった。今にも泣いてしまいそうな、なにかに耐えるような顔。  結局、笑って誤魔化そうとした郁人の言葉に俺は乗らなかった。郁人がくれた“友達”という関係を保つ最後のチャンスを自ら蹴ったのだ。  結果的に俺は郁人を傷つけた。俺は本物の馬鹿だ。  守りたかった関係を、俺は自分の手で、しかも、最悪の形で壊してしまったのだから。  俺は今、またしても部室で頭を抱えていた。あれ以来、郁人が空き時間に部室に寄り付くことがなくなったので、かえって顔を合わせなくてもいい場所になったのだ。  郁人の気持ちを聞いてしまった以上、いや、俺があんなことをしてしまった以上、元の関係へ戻るのは難しい。というか無理だ。 「郁人が、俺を……」  好き、だなんて。今まで考えたこともなかった。  そもそも俺は、人を好きになったことがない。付き合った彼女は何人かいるし、童貞だってとうの昔に捨ててしまってはいるが、いまだに人を好きになるということがどういうことなのか理解できない。  要するに俺はガキだ。ロクに恋もできず、郁人の存在にしがみついているガキだったのだ。
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