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なんてことを考えていると、不意に部室の扉が開いた。まさか、郁人?
「おお、光汰。ここにいたんだな」
サークルの部長だった。俺はホッと胸をなでおろす。
「お前、郁人に何かあったとか聞いてないか?」
郁人の名前を聞いて、俺の心臓は再び跳ね上がる。
「い、いや、別になにも。何でですか?」
動揺を悟られないように返事をすると、部長は困ったように言った。
「それがな……郁人が急にサークルを辞めたいと言い出したんだ」
…………は?
「理由を聞いても話したがらないし、光汰なら何か知ってるんじゃないかと思ったんだ」
郁人がサークルを辞める?本格的に俺との関わりを切ろうとしてるんじゃないか?
それは、それだけは……絶対に嫌だ。
俺は居ても立っても居られず、部室を飛び出した。後ろから部長の驚いたような声が聞こえる。すいません、部長。
郁人のケータイに電話をする……くそっ、あいつ切りやがった。
何度も何度もかけなおす。そのうち電源ごと切られるんじゃないかとヒヤヒヤしたが、十数回目でようやく郁人が出た。
『……なんだよ』
「今から中庭に来い!!」
俺は周りも気にせず怒鳴った。テキトーに場所を指定する。
『は? なんで……』
「いいから来い!!!!」
郁人はしばらく渋っていたが、有無を言わさない俺の態度に、最後は折れた。
『……わかったよ』
そのまま電話が切られる。
俺はケータイを握りしめ、中庭に走った。早く、早く、早く、あいつのところへ。
答えは、もう出ていた。
中庭には生徒はあまりいなかった。あたりを見回すと、建物の陰に隠れるように郁人が立っていた。
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