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 俺は郁人の元に歩み寄り、目の前で勢いよく土下座をした。 「悪かった!」  俺の突然の謝罪に、郁人も面食らったようだ。 「ちょっと、やめなよ」  郁人が焦ったような声を出す。俺はゆっくりと顔を上げた。  郁人が俺を立ち上がらせる。 「この間のこと、本当に悪かった。お前の気持ち、踏みにじるような真似して……」  郁人の顔がわずかに歪む。そして、薄く笑った。 「ほんとだよ、馬鹿。……そのうえこんなとこで土下座なんて」  だんだん郁人の笑いが本格的になってきた。ついには肩を震わせ、腹を抱えて笑い出す。 「おい、こっちは真剣だったんだぞ」  俺の抗議を郁人が片手で制す。こいつ、いつまで笑うんだ。 「ちょ、待って……くっ、ほんと、ツボった……あははっ」  いつまでたっても笑いが治まらないので、続きを話しはじめることにした。 「それで、返事なんだけど」  郁人の笑い声がピタッと止まる。 「え、返事とかするつもりだったの?」 「そりゃそうだろ! あんなふうにしちゃったけど、告白だったんだし」  俺のせいで最悪な告白だったけど。  郁人がバツが悪そうな顔をして向き直る。俺は一度だけ深呼吸をして言った。 「好きだ」 「……は?」  郁人が素っ頓狂な声をあげる。 「いやいやいやいや、光汰? オレ男なんだよ?」 「知ってる」 「いくらイエスマンの光汰でも、ここはすっぱり断っていいと思うよ?」 「ああもう! うるせえな!!」  郁人を引き寄せて、抱きしめる。俺の肩口で、郁人が息を飲むのがわかった。 「なんでだよ……」 「俺にもよくわかんねえ」  なんだそれ、と郁人が笑う。俺は続けた。 「本当は、お前の気持ちに気づかないふりをしていたかった。このまま友達でいたかった」 「…………」 「けど、あの時、お前が冗談で済まそうとしたとき、このままの状態で友達を続けていくのは無理だと思った。つーか、俺が嫌だった」  郁人は俺から体を離した。そのまま俺を見据える。 「だから、あんなことしたわけ?」 「……ごめん。たぶん、怖かったんだ」  郁人は腑に落ちないといった様子で黙っている。俺は自分の中で言葉を探しながら話す。 「どうしていいかわからなかったんだ、俺。……誰かを好きになることなんて、今までなかったから」  
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