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そんな感じでド素人の新人スタッフだった俺も、日を重ねる毎にそれなりの業務や接客もこなせるようになった。1年が経つ頃には、こんな俺にも顧客と言える存在も増え「仕事帰りにちょっと話したくて」なんて言いながら店に来てくれる人もできた。お兄さんが選んだコーデで初デート行きたいんで!と言われて、物凄いプレッシャーを感じながらも一緒にコーディネートを組んだこともあった。 今考えるとあの頃が絶頂期のような気がする。 それからしばらくして、新しいスタッフが入ってきた。つまり俺にとっては初めての後輩ができたわけだ。これまでは1番下っ端だった俺も、ついに教育するべき立場になった。幸いその子はアパレル経験者だった為、ある程度の知識もスキルもあり店に馴染むのも早かったし俺もそこまで教育という教育をした記憶が無い。それほど器用にこなしていたし、何より人懐っこくて頭の回転も早かった。大学生で俺より3つ下、うちの店舗では1番年下の新人君。顔立ちは、どちらかと言うと男らしいイケメンと言うよりは可愛らしい子犬系って表現がしっくりくるタイプ。 出身は関西らしいのだが、ギャグはイマイチ。でもそれがまた面白くて、いつもアイツの周りには人が集まっていた。赤く染められた髪がトレードマークで、小さい手はクリームパンだとよく弄られていた。 そんな彼だから、人との距離を詰めるのがとても上手い。俺もよく帰りに誘われたりして飲みに行ったり、重なった休日には遊びに行ったりもした。俺の大学時代、こんなにイキイキしてたっけな?と思う程、いつも笑顔で楽しそうだった。
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