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俺は今まで少しでも自分を大きく見せようと、背伸びして大人ぶって生きてきた。プライドだけが高くなり、素の自分なんて俺自身ですら分からなくなるほどに。そんな俺とは打って変わって、アイツは常に等身大と言うかなんと言うか、素直で柔軟で真っ直ぐだ。そんな所が堪らなく羨ましかったし、少し嫉妬していた。 プライベートで頻繁に連絡を取り合うようになってから、アイツは何故か俺ん家に来たいと言い始めた。最初こそ断っていたが、そのうち断る理由を作るのが苦しくなり、ついに今日の仕事終わりにうちに泊りがけで来ることになった。 部屋に入るなり、物珍しいものを見ているかのように目を光らせながら部屋中を見て回る姿は子供のようだった。仕事終わりで夜も遅かったので、食事はコンビニのもので軽く済ませて、サッと風呂にも入りお互い寝るだけの状態に。その時になってから、うちには来客用の布団なんて無い事に気付いた。幸い俺は翌日休みだったからベッドを譲ろうとしたのだが、何故か断固拒否され結局男二人で狭いシングルベッドに横になった。 横になってからは仕事の話から大学の話、しまいには地元の話まで次から次へと話し始め、あっという間に夜中の2時になってしまった。疲れているはずなのにいつまでも喋り続けるこいつの体力はどうなってんだと思いながら相槌を打っていると、さすがに疲れたのかだんだんと口数が減っていった。暫く沈黙が続いた為、寝たのだと思い電気を消そうと上体を起こすと、隣でもぞもぞとこちらに体を向け「どこ行くんすか」と腕を掴まれた。電気、とだけ呟いて枕元においてあったリモコンのボタンを押すと一気に暗くなる室内。目が眩み、ゆっくり横になると腕を掴んでいた手が離れ、隣のそいつも仰向けに向き直した。
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