裕とあやめと茜のそれぞれの嘘

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ふぅ、今日も遅くなったな。 こんばんは。荻窪茜です。毎日が歌のレッスンで帰るのが遅くなります。いつもは自転車でマッハの如く帰るのですが、今日は故障のため電車とバスに…。いつもより時間かかるから嫌なんだけどなぁ…。 「んっ、茜じゃないか?」 振り返ると、私の初恋の男の子が自転車を押して来たところだった。 んっ、なんかおかしい。そうだ。裕の隣にいつもいる女の子がいない? 「あやめは?」 「お父さんの誕生日とかで、姉ちゃんと先に帰ったぞ。」 そっか、じゃあ裕はひとりか…。これはチャンスだ。 「ねぇ、後ろにのせていってよ。」 「えっ?お前自転車は?」 「故障中。」 はぁ、とため息をひとつついて、「しゃーない、乗りな。」と後ろのあやめ専用?シートをポンポンと叩いた。 軽快に進む自転車。全国レベルのサッカー選手の鍛えぬかれた脚力には、私の体重なんかなんともないようだ。私は裕の背中にしがみつく。中3以来かな? 「茜、お前また胸でかくなった?」 「こらぁ、いきなりなに言い出すんだ。」 「背中にあたる感触が、前と違うからさ。」 「あんたの後ろに乗ったの1年以上前だぞ。一緒なら悲しいぞ。」 「いや、月島さん、あまりかわってない…。あっ、月島さんには内緒だぞ。」カラカラ笑いながら話す。 「そりゃ、毎日乗せていたら感触も変わんないだろ?」 「だから、成長してる感覚が…。ってなに言わせるんだよ。」 「あんたがいったんでしょ?ってか、そんなこと女子に言うか?」 ぐぇ、お腹に回した手をぎゅって絞めてやる。裕の間抜けな声に笑える。
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