新生活のスタート!

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彼女と別れた後、少し前より明るくなった夕方の通学路を、家まで自転車を()ぎながら、私はずっとダンスの事ばかり考えていた。森田さんは優しいから気を遣って励ましてくれたけれど、自分が下手なのはなんとかしなければならなかった。自分がミスをすれば、みんなの迷惑になってしまう事は、先輩に言われるまでもなくわかっていたし、やるからには上手くなりたかった。でも、みんなと同じレベルに追いつくにはどれくらい練習すればいいのだろう、正直見当がつかなかった。こうして、シンプルに楽しかった日々は突然、複雑な悩み多き日々に変わってしまった。 学校での練習だけではとてもついていけないと思ったので、部活が終わった後も家に帰って晩ごはんを食べたら、自分の部屋で練習をしなければいけなくなった。 私は人よりもニブいのか、怒られてすぐ泣くようなデリケートな性格じゃない。どちらかと言えば、「デカい」という言葉の方がよっぽど傷付いた。確かに平均よりは少しトールサイズだけど、バレーボール選手みたいに背が高い訳でもないのに……。それに、観たいテレビ番組もあったし、宿題がある日だってあったから、練習に時間を取られるのは地味にきつかった。 ただ、毎回ダメ出しをくらうとさすがにへこむし、もう二度とあんなに怒られたくはなかったので、バーベルのようにずーんと重たい気持ちを背負いながら、私はこの日から毎晩、ゴーシュのように一心不乱な状態で練習に打ち込むようになった。
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