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部屋の中には甘い香りがほのかに匂っていた。たぶん、お母さんが芳香剤を買って部屋に置いてくれたのだろう。いい香りで心を落ち着かせればすぐに眠れるはず、そう自分に言い聞かせて眠ろうとしたけれど、なかなか落ちる事が出来なかった。というのも、眠ろうとする度に、おなかにチクチクと痛みが走ったからだ。
一体なんでだろう、素肌にクモやムカデでも這っていたらどうしよう。状態を確かめる為、おそるおそるおなかをさすると、おなかの真ん中あたりで指先が何かに触れた。それと同時に小さな声が聞こえた。
「うわ、起きてしまったか!」
何かがしゃべってる! 急いで身体を起こすと、Tシャツがはだけて丸出しになっていたおなかの上に、人形のような物が乗っかっていた。ウェーブがかった長い金髪でシルクのドレスのような服を着たそれは、大きさ15㎝くらいで、よくある女の子の姿をしたフィギュアみたいだった。私が上半身を90度に起こすと、その人形はジャンプして、私のおなかからベッドに飛び移った。
「おっと、危ない」
また小さな声で人形がしゃべった。ありえない状況だったけれど、私は思い切ってその不思議な人形に話し掛けてみた。
「あ、あなたは誰!?」
「おお人間の少女よ、突然の訪問を詫びよう。私は『雷』だ」
よく見ると頭に2本のツノが生えた人形が、堂々とした態度で答えた。
「ええ、カミナリ様!?」
びっくりして、思わず大きな声が出てしまった。まさかカミナリ様がうちにくるなんて。
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